代表からのご挨拶
学校代表 髙橋 水木 Mizuki Takahashi
みなさん、はじめまして。一般社団法人色彩自然学の学校代表の髙橋水木です。
私は阪神淡路大震災を中学2年生の時にただ中で経験しました。芸術大学へと進路を決め、さまざまな人の表現活動に触れ、色の力やイメージの力、その人の全身から放たれる生命力を知りました。前身の日本色彩心理学研究所にて17年、色や形で表現をして、”心”を回復へと向ける心理支援業に従事しましたが、もう少し基盤を広げ、”自然”という視座から人間の”心”を考えたいと思い、この”色彩自然学”という分野を勝手ながら始めました。小さな本校を2020年に立ち上げ、4年目になり大学などの教育機関でも少しずつ教えられるようになりました。
私は植物、昆虫、動物、鉱物など、自然が好きで、よく観察しに出かけます。自然は言葉を話しませんが、”色”という言葉を話していて、それが闇雲でなく、在り方に沿って変化しているのを見つけます。色の中にこそ自然や宇宙の根源法則が働いていることを、かのゲーテ(Johann Wolfgang von Goethe)がその人生の晩年に『色彩論』で残したことを胸に置いています。
色彩は、きっと止まっているわけではありません。在るところに在るように息づいて、移ろっています。短い時間をかけるものもあれば、長い時間をかけるものもあり、必ず生命は色とともに変容していきます。そして”今”を表現しています。そうやって巡ろうとしていくのが、色彩なのではないかと思います。
22年このことをやってきて、私が強く思うことは、”自然とともに歩くこと”をやろうと思っても、何からどのようにやったらいいかわからない時代に、シンプルに”色”ということが自然のことを教えてくれるのではないか、ということです。そしてまた、”色を知りたい”と思っても、何からどのようにやったらいいかわからないけれど、”自然を知る”ということが”色を知ることにつながるのだと思います。〈色彩〉ということは、万物を生み出す母のような ”自然のことば” として学ぶことができるのだと思います。そこには、私たちの”いのち”が、”個”を超えたところで長いこと経験してきた”生命記憶”のようなものまで関わっています。この仕事で20年以上経った今もなお、まだわくわくと私が学び続けられるのは、それだけ深い地層を再発見するたびに沸き立つからだと思います。
現代は、地球規模で持続可能な社会について、自然との共生という観点から考えねばならない時が来ています。私としても、この学校としても、循環していく自然法則を象徴的に学べる”色彩”をとおして、人類が抱える課題に取り組んでいきたいと思います。
現在は、無肥料・無農薬で栽培する自然農法での畑もはじめ、色から伝えられる自然循環の学びを実践的なものとしたいと、同志である公認色育士たちと共に、自然との共生の場を模索しています。
色について、科学的なことや見解は私の専門ではありません。色を分類して見ていく科学的な立場では、色そのものの持つ生命力や前述した自然の変容の息吹のようなものが、捉えきれない気がしています。
ぜひこの学校で行われるさまざまなことによせて、”感じる心”を取り戻していただけたらと願っています。そして、私を超えたところにある〈私〉や〈自然〉への信頼を、懐かしく、再発見し、自然の智慧とともに生きていただけたらと願っています。私たちは自然の一員として、私自身の自然と結びなおすとき、いろんな色に心が開かれ、共鳴するのではないでしょうか。
まだまだ未熟者ですが、どうかよろしくお願いいたします。