川沿いには、木や雑草が鬱蒼と茂って、きのこが生えるような湿気の暗がりができていく。
その場所のもつ影のような仄暗さには、いつも目を奪われる。じっと見ていると、色彩が蠢いて見えてくる。
最近その翳りの場所で、毎日のようにハグロトンボに出会える。
3、4匹が葉っぱの上にとまって、羽を広げたり閉じたりして呼吸している。
ハグロトンボの羽の開閉のリズムは、
アルファー波のようなものが出ているんじゃないかと思うくらい、
私の心を落ち着ける。
開くことに時間をかけて、閉じるときはふわっと早く閉じる。
この緩急のリズムは、人工では再現できないように自然の作り出しているリズムだろうと思えてくる。
体はオーロラ色に見えて、玉虫色を思い出す。光のあたり具合で違う色に見えてくる。
ハグロトンボは、別名、「神様トンボ」と呼ばれているそうで、
確かにこの動作や在り方、そして色には、何か洗練されたものを感じざるを得ない。
息をひそめて、じっと見入っていると
自然からも見入られている感じがしてくる。