暦の上では「立夏」に入った。
昨年から解決することない出来事を
いくつかひきづっている私を横目に、
夏の気配が、あちこちから染み出している。
草花ができることなら森になろうとしている勢いを
歩道の傍らですら感じるようになった。
みんな本当は、
森に戻りたいんだろう。
自然はほんとうは
ここを森に戻したいのだろう。
緑たちがそう言っているように私には聞こえる。
時にありがたく、時に恐ろしく感じる自然は、
今、あれほどみんなを癒しやわらげた桜に
毛虫という仲間を与えている。
毛虫は毛が生える前は、
透き通った黄色い体をしている。
光の子どもみたいだ。
とかげがそこここの葉の隙間から
こちらの様子を伺っている。
しゃがみこんでのぞくと、よく目が合う。
枯葉色をして、腐葉土の上を這う姿は、
誇らしげだ。
アザミが美しく咲いてる。
棘をもってこそ美しく咲けるのだと言いながら
つんつんと咲いている。まるでどこかの城の王女のようだ。
夏が盛れば、
日差しが強くなる
今まで見えていたものが見えなくなる。
光が強すぎることも逆に闇のような働きを感じる。
だから今、見られるものを
体いっぱい感じて、見ておきたいと思う。